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日本最初の盲導犬

以前にも紹介しましたが、日本での最初の盲導犬は戦場で失明した軍人のためのものでした。盲導犬を知った有志の人たちが陸軍省に働きかけ、昭和14年、ドイツの盲導犬訓練学校から訓練された4頭の犬が輸入され、陸軍第一病院で再訓練したのち、4名の失明軍人に寄贈されました。
今回、ご紹介する本はこの盲導犬黎明期をつぶさに調査したノンフィクションです。
「日本最初の盲導犬」葉上太郎著(文芸春秋刊)。
この本を読むと戦争という大きな波に飲み込まれていく市井の人々の苦しさ、悲しみがよくわかります。
突然、失明した兵士は絶望のあまり自殺まで考えます。その心の支えとなれるのではないか、また、社会復帰に役立つのではないかと盲導犬が導入されたのです。一方、盲導犬を輸入したものの、その扱い方も養育の仕方もわからないまま、手探りの中で事業は進められていきます。しかも、陸軍の正式な認可があったわけでもないので、陸軍第一病院内で有志の人たちの努力によってかろうじて支えられていたのです。この時代、国の鉄道やバスに乗ることもできずに苦労した一方で、地方の私鉄では乗車が認められるなど、興味深い事実も載っていました。戦火の中、ご主人を命がけで誘導した盲導犬が、なんと、戦時中の食糧難で餓死したというエピソードには泣きそうになりました。
最初にドイツからやってきた4頭はどういう最後を迎えたか(みんな若死にだったことに驚かされました)はわかっていますが、他の和製盲導犬については消息もしれないものもあります。つまり、歴史の片隅に追いやられてしまったのです。その意味では、今回、この本で試みられた調査は貴重なものといえるでしょう。
ずっしりとしたノンフィクションなので、気軽には読めませんが、そのかわり、読み応え十分、盲導犬だけでなく、平和とはなにか、など、いろいろ考えさせられます。ぜひ、ご一読ください

 

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